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H.V.S通信 vol.22 1998年(平成10年)7月





 私の仕事には、月に一回、月次内勤というものがあります。一ヵ月の決められた週のなかで、仕事のない一日を使って本部に出向き内勤をするのですが、その週はたいてい私の場合木曜日か金曜日かになります。それで何でも一気にドバーッとやってしまいたい私としては、やっぱりいつも木をその内勤日にあてがうわけです。さて、その木曜日もいつものように京都に行くねからと普段よりええ(つもりの)服を選び、そろそろ家を出る時間になってからばたばたといらんことをして「あら、ヤバい、電車に乗り遅れてしまう。」と思いながらカークロックをちらちら見つつ車を運転していると・・・カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンああ無常にも赤の点滅がっ!しかもこの時間帯は確か上り下りの近江ガチャコンが(文字で書くとめっちゃマヌケ!まぁ名前自体オマヌケcuteではありますがなんだかロボコンの友達みたい)入れ替わりにやってくるので二台通り過ぎるまで当然踏み切りとおせんぼしたまま、というわけで。うんっ、もう!ただでさえハラハラの時間なのにぃもうこりゃだめだ、とここらへんであきらめてしまいます。そして同時にあまりよろしくない考えが浮かんできました。

 実はこの内勤日と言うのは、決められた期間内であればいつ行っても全くOKで、したがっていちおういついつに来ます、とは前もって言ってあるけれど極端に言えば直前に金曜日に変更しますってなことも言えるわけです多少言いにくいものですが。ええぃ、遅刻するよりはましかろうと会社にさっそく電話をして『すいません、目の調子が悪くて』などとのたまい本部の人に変更してもらいます。そしたらもうこの一日は、晴れて自由の身。『いってきます』と家の人に言ったからにはすぐに帰宅するのももったいない。そこらへんでもぶらぶらしようとぶらぶらしてみます。そもそも子供のころのずる休みというものは、だいたいが家族をも相手にしての巧妙な仮病の報酬だったのでいつも誰か監視員がいてふとんの中でまんがを読んだりテレビを見まくるぐらいが関の山でしたが今はホレごらんの通り立派なおとな。(立派な大人はずる休みなんかしまへん。)見つかる心配もないしどこへでも行ける。まさにフリーーーダムっ!ほんとやったら今ごろオフィスで仕事しててここにはいないはずやってんやとよろこびをかみしめると今の私ってまるで透明人間じゃん。わーいなんでもできるぞ。案外自分の分身がじつはちゃんと仕事場に行っててくれるのかも知れないな、とか思えてきました。

 さあて、今日一日なにをしてやろうかなあ。せっかく透明人間になったんだからと足が向かった方向は、と言うと、悪事の数々。ではなく普段からやらなやらなと思ってできなかったことでした。便せんを買って外で友達に手紙を書いたり、知り合いがやっている店のありかがどうしても分からなかったので今日こそはと車をぐるぐる走らせて冒険の末にやっと発見できたり。その日隣り合わせた人ともほんとやったら会うこともなかった人と思うといつもよりたくさんおしゃべりしたり。いいことばっかりで大活躍できた一日でした。こういう時、時間を神様から余分に頂いたような時は普段はそんなこと全く思わないのにいいことをしたくなるのは、やっぱり茎やら葉っぱやらはいい加減やけど根だけはまじめやということでしょうか?あの透明人間が大活躍する物語も案外本当の話かも知れませんよ。次の日会社に行ったら『あれ、南さん。きのうも来てたよね。』とは誰にも言われなかったけれど随分得をしたような顔をして仕事をしている私がいました。

 (みなみかなえ/HVS)




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e-mail michio@jungle.or.jp(中村道男)