hekisui Hall voluntary staff original 1995
Home page for all concert goers and movie goers

H.V.S通信 vol.23 1998年(平成10年)9月



私が始めて買ったLPレコードは
宇宙船艦ヤマトだったと
記憶している。
   

 私が始めて買ったLPレコードは宇宙船艦ヤマトだったと記憶している。あるいはスーパーカーのレコードだったかも知れない。いずれにせよ、小学生の時、本屋(!)で買ったものだ。もちろんそれまでにドーナツ盤やソノシートは買ってもらったことがあったし、家には森田健作や黛ジュン、魅惑のスクリーンミュージックなどのLPレコードがあった。
 しかし、あの所有欲をそそる大きなサイズに満足したのはヤマトの時がはじめてだったと思う。以降、中学で洋楽に目覚め、高校時代まではおこづかいをためて3ヶ月に1回ぐらいのペースでLPを買っていたものだった。当時それほど音楽知識のなかった私にとって、膨大な数のLPの中から1枚を選ぶのは至難の技であり、それの助けとなったのは友人であり、ステッカーやポスターなどのおまけの存在であった。
 例えば、陳列棚一段をぶち抜くほどの枚数が出ていたローリング・ストーンズ。どれが良いかわかる訳もない。で、さんざん悩んで私が買ったのは「Their Satanic Majesties Request」だった。ストーンズに詳しい方は「おお、通やなぁ」などと言うかも知れないが、そんなことはない。廉価版で価格が1600円だったこと(当時の相場は2500円)、ジャケットのステッカーが付いていたことが決め手となっただけのことだ。なんのことはない、他の盤はセカンドプレスだったが、本作のみステッカー付きの初回プレスが売れ残っていたのだ。初めて買ったストーンズのLPが「サタニック〜」という人間も日本では数少ないであろう。
 まあ、こんな具合にして、私のレコード棚は徐々に充実していったのであった。大学に入ると、中古レコード店でアルバイトを始めたこともあり、私のコレクションは日を追うごとに増えていった。なにせ、バイト代はほとんどがレコードへと変わっていったのだから…。
 そして現在。レコード屋などと便宜上呼ばれているが、巷のショップにレコードが置かれていることはほとんど無い。ひそかにレコードが人気を呼んでいるらしく、日本のアーティストが限定でアナログ盤(レコード)を出すことはあっても、世間一般的にはもう過去のモノというのが常識だ。普通の人ならとっくに処分しているか、プレーヤーがないので聴けないが捨てるのも惜しいので押し入れにしまってあるという人がほとんどだろう。
 なのに、なぜ、レコードなのか。なぜ、私はLPを愛しているのか。CDはCDで便利だし、私も両方持っているものはCDで聴いている。レコードのほうが音に丸みがあるとか、人間の耳にやさしいとかなんとか言うがそんなのわからないし、どうでもいい。
 私がレコードを好きな一番の理由はレコードジャケットの存在。これに尽きる。個人的には、レコードの「A面」・「B面」・「ジャケット」の3つがそれぞれ同等の価値を持っていると思っている。CDのジャケット(ケースと呼ぶのが正しいと思う)は、味気ないしあのプラスチッキーなところがどうも好きになれない。かといって紙製のジャケットもあるがあれもイマイチ。あのサイズでいくら凝ったデザインをしてもインパクトに欠けるし、凝れば凝るほどみじめに思えてしまう。CDのジャケットを作るデザイナーさんもやりがいがないと思う。
 それにくらべLPのジャケット。あれは30センチ四方での偉大なるアートだ。ブルーノートの一連のジャケットが良い例だろう。過去に数多くの名作ジャケットが生み出されて来たし、その内容に劣らないぐらいジャケットが話題を呼んだこともあった。
ビートルズのブッチャーカバーやヴェルヴェッツのバナナ(今回のイベントのチラシはこれのパロディとして私が作らせていただきました)、LP末期にもプリンスのヌードジャケットなんてのもあった。CDでジャケットが話題にのぼるってあんまり聞かない。それにLPだとジャケット買いということができた。内容は知らんけどジャケットがあまりにカッコいいんで買ってしまったという経験、みんなあるはず。
 で、こんな能書きを碧水ホールの上村氏と話していたら、彼も同じ考えを持っており、このLPジャケットをアートとして一同に紹介できないかと、だいぶ前から思っていたらしい。それじゃあ、俺はレコード提供するわってんで、そこから話はトントン拍子に進み、このロックLPジャケット展を開催するに至った次第。
 この展覧会を見に来てくださったあなた、このジャケットの壁をご覧になってどう感じるかはあなた次第。あなたの思い出の1枚を見つけて感慨にひたるもよし、新しい発見をするもよし、ご自由にお過ごしください。なにかを感じて、その思いを持って帰っていただけると幸いです。

P.S. 家にあるLPを処分したいとお考えのあなた、ご一報ください。安価にて(笑)引き取らせていただきます。
 1998.9.1.  喜多洋一
Zip Code 528 
滋賀県甲賀郡水口町伴中山1296
E-Mail yo-kita@mx.biwa.or.jp
Home Page http://www.jungle.or.jp/o-blue/
(喜多洋一/投稿)



HVS通信23号のインデックスへもどる
HVS通信のホームページへもどる
e-mail michio@jungle.or.jp(中村道男)