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H.V.S通信 vol.24 1998年(平成10年)10月

わらったかお
       
 『三星堆』を見に行った。今まで見た中で一番おもしろかった。本当に単純に楽しめた。なにしろ展示室の中はいろんな笑った顔でいっぱいなのだから。
 
 『三星堆』というのは、中国内陸部の長江上流域にひろがる四川盆地の古代遺跡の名。そこから出てきたたくさんの人物像や仮面が今回京都にやってきた。東京でやってた時に某夜十時のニュース番組で取り上げられた時から楽しみにしていた。すごく楽しみにして、期待して見に行ったものでがっかりしたことは多いが、これはよかった。だいたい同じような顔がずらーっとならんでいるのだが、ぜんぶ笑っているので、こっちも顔が笑いそうになった。おまけに一緒に見に出かけたつれの顔がなんとなく同じ系統のような気がして笑ったら、おこられた。大きな大きな目の飛び出た顔とか、背の高い、何を持っていたのだか両方の手それぞれで輪を作っている像などが目玉であるようだった。けれど私はその他大勢のわらった顔が好きだ。ひとつ持って帰りたかった。で、外のポストカードなど売っている所で買おうと思った。ところがそれらのレプリカには展示室で感じたような魅力がなかったのだ。あんなふうに微妙に笑った顔はつくるのが難しいのだろうか。
 
 とにかく、人の顔は口角を少しあげるだけで笑った顔になるということがよくわかった。私は何も考えずにぼーとしていたら「おこってる」と言われた中学生の頃からつとめて笑った顔になるようにしてきた。このあいだ新聞を読んでいたら、「自然なつくり笑い」は男性より女性のほうが上手だという記事が載っていた。みんな努力してるんだ。私だけじゃなかった。モナリザは無理だけど、この仮面ぐらいの笑った顔がいつもできたらいいなと思う。
 ところでまったく話は変わるのだけど、笑った顔でいつもこまること。たとえば、どこかに行った帰りに友達と別れるとき。笑って「じゃあね。バイバイ。」と言って一人でそのまま歩いていくとき。いつ、その笑った顔をしまうか。いつまでもそのままの顔では顔の筋肉がつらい。でも急に顔つきを変えたら、前から歩いて来る人が変に思わないかなどと考えてしまう。きっと誰もそんなこと気にしてないと思うけど。 
(中島綾子/HVS )



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