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H.V.S通信 vol.26 1998年(平成10年)12月



アダルトビデオで
比較文化


             


 みなさんはアダルトビデオを見たことがありますか?私はすっかりご無沙汰になってしまいました。いまや誰が人気があるのかとかまったく分かりません。でもたまにビデオ屋さんのアダルトコーナーに行くと、なんかこう、なんでこんなにいっぱいの女優がいるのに知り合いはひとりもいないのだ、とか誰かに見られたらどうしよう、とか唾を飲んでしまうのはなぜなんだろう、とかいろんなことが感じられてなかなかに楽しめます。
 楽しみは他にもあります。最近はすっかり楽しいのがなくなりましたが、タイトルにパロディー精神にあふれるものが多いことは特筆できます。それはただの流行だけではなく、あらゆる面に向いたパロディーなのです。私は『原子乳母』というのと『20世紀の性欲異常者』というのに爆笑しましたが(*1)、音楽ファンの私にとってもなかなかに油断もスキもない。現在ではアダルトビデオ界の映像作家の「映像集(女優が主役ではないんです!)」とか、一本で消えていった女優のその後を追うドキュメンタリーとかも出ていて、取り扱う幅もずいぶん広がっているんですね。さすが日本のビデオ市場の最大派閥だけあります。
 海外のもの(洋ピンといいます)を見ると日本の「エッチ観」なども垣間みれてまたおもしろい。アメリカのポルノで驚いたのはいわゆる「アヘ顔」のアップの男女比率が半々に近いことです。これはニューヨークで見たアダルト専門有線放送でも同じでした。こんなところでも男女平等が進んでいるのか、見ているのは男性だけではないのか、ホモセクシュアルの人もターゲットにしているのか、などとさまざまな考えが浮かびましたが、こんなこと誰に相談したらいいんでしょう?
 話がそれました。それに比べて日本ものはアヘ顔は圧倒的に女性のみです。ひどい場合には男は背中だけというものもあります。また体位もアメリカは女性上位(映画『氷の微笑』でもそうでしたね)かバックが多いのに対して日本は男性上位(これを正常位というのはなぜ?)が多い。私は評論家ではないのでわかりませんが、けっこう日本社会での女性の位置を表していると思います。フェミニストの方が見ればきっと卒倒するくらい女性の地位は低いです。主人公でありながら男の言うがままにされ、細やかなところまでカメラで撮られるんですから。サングラスやお面をしてエッチをする男優を見て「自分だけ匿名でいてずるいなぁ」と思ったりします。まぁそういいながらアダルトビデオ見てる訳だからダメですか。
 今ではすっかりアダルトビデオを見なくなりました。たまにビジネスホテルに泊まったときに100円か200円出して見るくらいです。でも基本的にはアダルトビデオ、好きです。ただそれより好きなものがいっぱいあるためにアダルトビデオまで手が回らないだけで、金も暇もたっぷりあったらきっと見ます。だってこんなにたくさんのこと考えさせられるものってそうそうない。アダルトビデオは教育的効果もあるんですよね。

 韓国に行ったとき、ホテルにアダルトビデオの有料チャンネルがあったので「これは比較文化の観点から見なければ」とかなんとか言い訳を考えて(いちいち自分に対しても言い訳を考えなければならないところもまた楽しい)さっそく見てみました。そのビデオは当然韓国語なのですが、その下には日本語の字幕がついていました。違う作品を見てもやっぱり日本語字幕付き。思わず大笑いしました。すでに日本人が見ることを想定してあるんですね!そしてまたその通りに見てしまう日本男児のみなさん、あまりに、あまりにも情けない!その情けなさに私も加えて下さい!
(HVS 井上 陽平)

*1 1970年代に一世を風靡したプログレッシブ・ロックバンドであるピンク・フロイドのアルバムに『原子心母』というのがあり、また同様に人気のあったバンドのキング・クリムゾンの曲に『21世紀の精神異常者』というのがあるのです。ここらへんは我が碧水ホール館長が詳しい 。



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e-mail michio@jungle.or.jp(中村道男)