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H.V.S通信 vol.28 1999年(平成11年)6月
恋はみじかい
夢のようなものだけど
『まひるのほし』上映運動の周辺
私は何か夢を見ているのではないかと思うことがある。ある時を境にして夢遊病者となったのではないか。私はいま44歳である。これまで怠け者で、鈍足で、いつも必要なことを先に先にと送ってしまうことが慣れっこになってしまっていた私が、気がふれたように勤勉となり、思いついたことをすぐ実行に移し・・・。ただ足はやっぱり遅い。現にこの原稿も締め切り間際に書いている。
これは白昼夢である。私は悲鳴をあげている。これからどうなるのか、これからどうすればよいのか、先が読めないことの不安・・・。夢であればよい、私は自由でいられる。しかし、ポスターもパンフレットもチケットも出来上がり、各所に配布され、私はその発信者として縛られている。だれか助けてくれ。
碧水ホールのスタッフの方から「HVS通信」への寄稿を求められ、私は、さて何を書こうかと戸惑ってしまった。私はある理由で映画『まひるのほし』を事前に見なかった。その理由は、ひとつは私たちのパンフレットに記したが、もうひとつの理由は、先に見てしまってこの自主上映運動にそそぐエネルギーが削がれることを怖れたということもある。だから、映画の内容について生半可なことは書けない。私は運動を自己目的としたくなかった。私はだた映画が観たい。だが、『まひるのほし』という映画には他の映画と違った何かがあると触覚がふるえ、ある心の回路を通して、私は自主上映運動を夢想し生動させたのである。
さて、話は上映委員会の内情といったことに及んで、この文章に少しは現実的な輪郭を持たせたいと思う。私たち上映委員会のメンバーに名乗りを挙げたのは、谷口悦子、仁志出孝治、私の3人である。この3人はすべて新井英一ライブ実行委員会のメンバーなので、新井英一ライブ実委の一部が『まひるのほし』上映委の全部に移行したというのがただいまのところの私たちの会の実体なのである。3人はそれぞれの仕事を持ち、生活があり、また別々の夢を追いかけて走っている。だから、なかなか一堂に集まって話しをする機会はなく、これまではお互いに電話や手紙や別の用事で出会いながら少しずつ上映委員会の骨格を作っていった。お互いに走法もスピードも走っている場所も違うので、上映委員会はチームとは言えないかもしれない。だた、時々、擦れ違った場所で「水」を補給し合ったりしている。
そんな一例をちょっと紹介したい。ある時谷口さんが「中尾さん、これ聴いてごらん」といって一本のテープを手渡してくれた。それは新井英一の「マイ・フェイバリット・ソングス」の海賊盤といった趣のテープで、ちょうど二人で仁志出さんの家へ向かう時だったので、すぐに車の中で私は聴いた。そして、しばらくして『みんな夢の中』という曲が流れてきた時、私はいきなり目頭が熱くなり視界がぼやけ、ハンドルを持つ手の指先が小刻みに顫えるのを押さえることができない、という経験をした。『みんな夢の中』---1969年の浜口庫之助の作品で、高田恭子が唄っていたというぐらいは私は覚えていたが、ずいぶん久しく聴かなかった。私はその時これは「とんでもなく深い何かを表現している」(佐藤真監督の言葉)と思った。
紙面をとって申し訳ないが、ここに全詩を紹介したい。
*1『みんな夢の中』---1969年浜口庫之助
(ペーパーに掲載...編集)
新井さんはこの歌をかっこの中に入れたような歌詞に変えて、歌っている。
無用な説明や感想は省く。ただ、谷口さん、ありがとう、とだけ言いたい。・・・
私はこの上映会と監督との交流会を企画する時、これは失敗してもいい、と思った。むしろ失敗して多くのことを学ぼうと思った。だが、いまポスターがいろんな場所に貼られているのを見る時、これは既に私たちの手を離れて、いろんな形で協力を約束してくださった様々な個人、団体、グループの手に渡されたものであり、いわば天空に舞い上がった凧であると思える。たまたま好意ににより通信の紙面の提供を受けた私は、私一個人の思惑を超えて、凧の糸を引いてくださる様々な人達になり変わり、この企画をそれなりの姿形あるものにしていただきたいと願わずにはいられない。いろんな人が、いろんな場所から、電車を満員にして駆けつけて、碧水ホールを”静かなお祭り騒ぎ”の場としていただくようにお願いせずにはいられない。
そして、私たち「見えない姿を追いかけてゆく」上映委員会の活動に、何らかの、出来る範囲での、ひとりひとりの協力をお願いしたい。
1999年6月
中尾忠夫(投稿・記録映画『まひるのほし』上映委員会)
●上映会の日程など前ページに掲載しました。
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