『キートンの一人百役』


The Playhouse (1921)

出演:バスター・キートン、ヴァージニア・フォックス、ジョー・ロバーツ
監督・脚本:バスター・キートン、エディ・クライン
製作:ジョセフ・M.スケンク、コミックフィルム作品、ファーストナショナル配給   上映時間20分 公開日1921.10.6

【あらすじ】
 今夜のオペラ劇場の出し物は、歌や踊りやお喋りを黒人的なノリで白人が演じるミンストレルショー。序曲を奏でるのは、半分ジャズバンド風の管弦楽団。幕が上がって役者が揃う、「ブラウン君この辺りの竜巻はすごいらしいね」「そうなんでさぁご主人様、そいつにやられると、1ドル銀貨が四つに割れて25セント玉になっちまうんでさぁ」…と、とぼけた台詞。そして、このショーが他の何より秀逸なのは、演ずる人もスタッフも、見る人までもが皆バスター・キートン、という趣向。第二幕、二人組のタップダンスが鮮やかで、もっと見ていたいなあ、というところで、バスターは夢から醒めた。
 現実のバスターは舞台の裏方=雑用係。大道具の片付けやら、新入りを楽屋に案内するのやら、地味な仕事を一人で何役もこなさなければならない。今度の新入りは、手品師のアシスタントガール。てっきり一人の女の子だと思ったら、双子の姉妹。鏡の効果で四人に見える。これは一体夢の続きか?!、とバスターは混乱してしまう。
 我侭な劇場支配人ジョーから言われる難題にも、バスターはそれなりに巧く対応していた。兵隊役が一度に5、6人辞めた穴埋めを今すぐ何とかしろ、と命じられれば、近くの工事現場から人足を集めて来たり…。
 ところが、支配人のアゴ髭に着いたタバコの火を消すために、消化作業用の斧を用いて支配人をノックアウトしてしまう。怒りをかったバスターは劇場内を逃げ回ることとあいなった…。

【かいせつ】
キートンの映画的好奇心=トリックが昇華した作品。動きのタイミングを計るために、知人のバンジョー奏者にリズムを取らせてカメラを廻したという(この頃は手廻し式カメラ)。ヴォードヴィル時代に演じたとおぼしき技が多く見られる、キートン本人のアイデアを知るには最良のテキスト。しかし、トリック優先で、後からストーリーを考えついた様な構成には、やや不満のある方もおられよう。

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