『キートン・ライズ・アゲイン』


Buster Keaton Rides Again (1965)

登場人物:バスター・キートン、エレノア・キートン、ジェラルド・ポタートン
監督・撮影:ジョン・スポットン
製作:ジュリアン・ビッグズ、ナショナル・フィルム・ボード・オブ・カナダ作品
上映時間61分 ドキュメンタリー作品

【かいせつ】
 バスター・キートンは、その晩年を生きる伝説として過ごしていた。その頃までには、彼が映画史上の天才の一人であるという評価は確かなものになっていたのだ。国の内外を問わず様々なプロダクションから出演依頼が舞い込み、彼はそれらの依頼を出来るだけ受けることにしていた。その最後の数年間、特筆すべき傑作には恵まれなかったが、好きな仕事で忙しい日々を送ることができた。
 1964年の秋に撮影された『キートンの線路工夫』The Railrodderという短編作品がある。カナダの東海岸に泳ぎ着いたバスターが、西海岸を目指してモーター付レールカーに乗り、大陸横断をするというその作品で、彼はカナダの素晴らしい大自然を楽しみながら仕事をする機会を得た。その撮影の様子をカメラに収めたドキュメンタリーが『キートン・ライズ・アゲイン』である。
 この作品で、バスター・キートンの飾らない在りのままの姿を見ることができる。彼はリラックスしているし、笑いたい時に笑う。『キートンの線路工夫』の監督ジェラルド・ポタートンとの打合せの最中や、ギャグのアイデアが浮かんだ時、キャメラのアングルにアドバイスを与えたり、エキストラに振り付けしたりする時。そこには自然体のバスターが居る。そして、バスターは思い出を語る、ヴォードビリアンだった頃のことやMGM時代の話、サイレント・コメディへの愛着…。ローレル&ハーディーの短編の一シーンを再現してくれたりもする。
 見ていて痛ましい場面もある。バスターが咳込むとき、この後わずか一年半足らずで肺ガンで他界することになる彼の健康状態に思いを至らせずにはいられない。撮影中に迎えた彼の誕生日は最後から二番目のものだった。
 エレノア夫人が傍らで暖かく見守るなか、ウクレレを弾きながら「ケーシー・ジョーンズ」を歌うバスターの楽しそうな表情で、作品はエンディングを迎える。

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