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H.V.S通信 vol.28 1999年(平成11年)6月



高校生と中年のロックファンに贈る  

人生狂ってわくわく 


 エレキギターを肩に引っかけて自転車に乗る高校生をずいぶん見かけるようになりました。その姿はなかなかに危なっかしく、運転する最中にそんなそんな人が前を走っているのを見ると、私は「突然ふらふらっと寄ってくんなよ〜」などと独り言を言ってしまったりします。そしていつももうひとつ、私はこっそり独り言を言います。
「おまえの人生確実に狂うでぇ〜!」

●ボブ・ディランを聴いて
「自分もやってみよう」と思ったのが運のツキ

  私がそんな独り言を言ってしまう理由は、何のことはない、私自身が「ロックで人生狂ってしまった人間」だからです。ボブ・ディランを聴いて「自分もやってみよう」と思ったのが運のツキでした(ビートルズはすごすぎて真似しようとも思わなかったんですが)。全くロックさえ知らんかったらきっと今の悩みや苦しみの半分以上は感じずに済んだでしょう。なにせギターを持ったり歌を歌ったりするたびに「己の音楽センスのなさ」とか「それでも意気がって周りと衝突した過去」とか「好きな女の子を浮かべて作ったラブソングの恥ずかしさ」とか「それでもまだどこかで才能をあきらめきれない自分のアホさ加減」とかそんなものがもろもろと思い浮かんでくるのです。ロックを通じて作り上げた理想のライフスタイルと現実のあまりの距離に愕然として落ち込むこともしょっちゅうです。

 「自分にもできるんじゃないか」思わせるところはロックの最大の魅力のひとつです。クラッシックみたいに英才教育を受ける必要はない。とにかく聞いて「俺もちょっとやってみよう」と思った時点でその音楽は「聴く音楽」から離れて「ロック」に変わっていきます。それがさだまさしであれGLAYであれウルフルズであれ、あとは好き嫌いの問題だと思うんですよね。
ところがロックの「自分にも出来るのでは...」と思う感覚はものすごく強いものです。なにせロックの中心的なメッセージは「自分の可能性に賭けてみろ!」なんですから。それで進学をあきらめた人、家族と離れた人、仕事をやめた人、いっぱい知っています。ロックへの思いが強ければ強いほど(それが一時的なものであればなお)、学歴や安定した職という「安全パイ」を断たざるを得なくなります。現実と折り合いをつけて...なんて成熟した感覚はロックにはありません。

●才能とセンスがあるかどうかは
 「やってみなければわからない」

 しかしご存知のように音楽は才能とセンスが非常に大きな部分を占めます。そしてそれらは非常に限られた人にしかないことも明らかです。努力だけでどうこうなるものではないんですね。しかもその才能とセンスがあるかどうかは「やってみなければわからない」というんですから余計にややこしい。さんざんやってみて、実は自分には才能もセンスも、さらにテクニックさえもなかったことに気付いてしまうこともよくあります。でもすでにそのときには自分の地位は不安定、収入は少額、将来も見えてこない・・・なんてことになるわけです。

 「ロックは悪魔の音楽だ」という言葉がありますが、「もしかしたら俺にも...」と思ってしまうなんて、全く悪魔のささやきじゃないですか!そりゃあ才能とセンスがあった人はいいですよ。きっとその人達も「自分の可能性に賭けた」のでしょう。そしてその人達はその可能性があったのです。当然そうして生きてきたのですからメッセージが再び「自分の可能性に賭けろ」になるのも当然です。しかしその可能性に賭けて、実はその可能性はほとんどなかった、という人がその背後にゴマンといるんですね。
 だから時折「この人、ロックにさえ目覚めんかったら幸せな人生送れたやろにな〜」と思う人に出会うとおせっかいながら「全く罪作りな音楽や」と思うことがあります。きっとこのような人はこれからも続々と再生産されるのでしょう。いやきっと続々と再生産されて欲しいんですね。私は。

●恥ずかしさもセンスのなさもアホさ加減も
 全部ひっくるめて

そこで宣伝。碧水ホールでは「ホールをライブハウスにしてしまおう計画」の参加メンバーを募集しています。締切は5月31日でしたが、実はほとんど(ロック、ポップ系の・・編集)応募はありませんでした。どういうこっちゃ?!(ロビーライブハウス化計画)

 この企画で私がいちばん期待していることは「元ロック野郎」の中高年の人の参加です。私と同じように恥ずかしさもセンスのなさもアホさ加減も全部ひっくるめて、今も音楽と関わっている人がいるんじゃないか、そんな人と出会えたら・・・なんてことを想像したらわくわくします。きっとその人たちも、やはり私と同じように「それでもやっぱりロックと出会えてよかった!」と思っていると信じて。

●「元ロック野郎」の中高年へ

 みなさん!今からでも遅くないですから、ぜひぜひ参加しましょう!いい具合に力の抜けた人たちも、今でもじりじり熱い人たちも、みんな参加しましょう!ロックにこだわらなくても参加しましょう!あぁもう誰でもいいから参加しましょう!幸いCDだって個人で作れる時代です。碧水ホールを「噂のインディーズレーベル会社」にしてしまいましょう!

 なんかひとりでわくわくしてます。だれかこのわくわくに乗ってくださいよ〜。
(井上陽平・HVS)


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