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H.V.S通信 vol.58 2003年(平成15年)1月



vol.58-31
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優秀映画鑑賞会
 
 
■碧水ホール企画上映 通算27回目
優秀映画鑑賞会
 銀幕に生きる映画スター達


石原裕次郎:あらしを呼ぶ男
2003.1/25[土]
13:00−14:41…嵐を呼ぶ男
15:00−16:34…悪名
16:50−18:31…嵐を呼ぶ男
2003.1/26[日]
10:30−12:00…沓掛時次郎 遊侠一匹
12:20−14:09…人生劇場 飛車角と吉良常
14:30−16:00…沓掛時次郎 遊侠一匹
全作品35mm、カラー、シネマスコープ
【入場券】1日券500円 
 *チケット1枚で1名様1日有効
 この上映会は、文化庁と東京国立近代美術館フィルムセンター(以下フィルムセンター)が音頭をとって、フィルムセンターが所蔵する日本映画を日本各地で上映する企画です。パッケージ化されたプログラムリストはAからTまで20プログラムあり、どのプログラムも4作品セットになっています。上映会の名称は開催地によって異なります。  碧水ホールは『嵐を呼ぶ男』『悪名』『沓掛時次郎 遊侠一匹』『人生劇場 飛車角と吉良常』の4作品で構成されたJプログラムを選びました。
 選択のおもな理由は次の通りです。

(1)2002年は萬屋錦之介生誕70周年だった

 去年は萬屋錦之介(沓掛時次郎の時は中村錦之助)生誕70周年でした。ということで、年を越しましたが、生誕70周年を祝って。わたしなんか、テレビの「子連れ狼」や「てめえら、たたき切ってやる」の台詞で有名な「破れシリーズ」がリアルタイムですが、映画の中の錦之助はやはりすごい。名優錦之助をリスペクトする(敬意を表する)にふさわしい1本として『沓掛時次郎 遊侠一匹』を。また、この作品は、近年国際的な評価が著しい加藤泰監督が自伝で「心をこめてこしらえた」と語る入魂の1本です。

(2)仁侠映画の上映

 「おいらはドラマー、やくざなドラマー」の歌詞で始まる『嵐を呼ぶ男』ですが、やくざもん、仁侠もんの映画は、公共のホールではあまり上映されないですよね。ですが、今回は文化庁が音頭をとり、国の機関であるフィルムセンターが貴重な文化遺産として大切に所蔵するプリントなので、公然と上映できます。
 この映画の時代の仁侠ものは、人肌脱いでくれるカッコイイ親分に加え、親孝行、身内思い、義理人情に厚い人々が描かれています。そして、今の時代に欠けている何かが、この時代の映画には詰まっていると思います。けっこう勉強になるストーリーです。

(3)映画美術監督の内藤昭さんから
 「『悪名』がいいですよ」と言われていた


 2000年に雷蔵 in 水口を開催した時、ゲストトークに映画美術監督の内藤昭さんをお招きしました。イベント終了後の打ち上げで、内藤さんに「次に上映する内藤美術作品は何がよろしいでしょうか?内藤さんが発明された『大魔人』などはいかがでしょう?」などと恐る恐るお尋ねしました。すると内藤さんは「『悪名』がいいですよ。」とスパッと話されたことがありました。当時の日本映画最高峰を誇っていた大映スタッフが結集した娯楽アクション映画です。瞬きするのがおしいくらいの全編名ショット。すみずみまで職人魂が行き届いた傑作です。

(4)全作品35mm、カラー、シネマスコープサイズ

 4作品どれも横長の映画です。それと、35mmで撮影された映画は35mmフィルムで、ビデオで撮影された映画はビデオで、8mmなら8mmで、というふうに、映画は元のフォーマットで上映するのが一番だと思います。

(5)まだ古典になりきれていない時代の映画

 いわゆる戦後の映画黄金時代とされる1950年代のマスターピースから少しずれた、それ以降のまだ古典になりきれていない時代の映画群です。毎週新作が公開された時代の膨大な映画群が、再びスクリーンに写し出される機会がこれからも増えていってほしいと思います。

(6)俳優

 『人生劇場 飛車角と吉良常』の健さんをのぞいて、主役級の男優は、みな故人です。映画の時代の人は、やはり銀幕で蘇ってほしいのです。
 また『人生劇場…』の主役、鶴田浩二は、水口ロケも敢行された反戦映画の傑作『雲流るる果てに』(1953年、家城巳代治監督)にも出演されている、というご縁も。わたしなどは、NHKの土曜ドラマシリーズ「男達の旅路」で鶴田浩二を知った世代なので、ほとんど映画では知らないのですが、ともかくかっこいいのです。
 石原裕次郎は1957年には『嵐を呼ぶ男』の他に、日本映画オールタイムベスト10ではたいていランクインされる川島雄三監督の異様な傑作『幕末太陽傳』にも出演していますが、とにかくこのあたりの裕次郎は、いやあ、むちゃくちゃかっこいいです。

(7)女優

 男優スターが目立つ4本ですが、実は女優陣も、すんばらしいです。中村玉緒のかわいさ、池内淳子の可憐さ、中田康子(鑑賞の手引きとチラシには田中康子と表記していますが、これは間違い、すみません。)のお色気、藤純子のかっこよさ等々。

(8)監督

 (1)の項でもふれていますが、海外の映画祭でも大特集が組まれるほどリスペクトされている加藤泰監督作品が、全20プログラムの中からJプログラムにしか入っていません。また、田中徳三監督。驚異の16作シリーズへと発展した『悪名』、雷蔵の名シリーズ「眠狂四郎」など傑作シリーズを切り開いた田中監督作品も、このJプログラムにしか入っていません。さらに、巨匠内田吐夢監督。日本映画ベストものではたいていベスト10圏内に入る『飢餓海峡』を作った大監督ですが、戦前から膨大な映画を量産しているのに、いまだその全貌は明らかにされていません。ということで、いつかこうした監督の大特集が生まれることを期待しつつ…。(加藤泰監督の大特集は90年代中頃に日本でも行われました。)

(9)上映時間

 この時代の娯楽映画は上映時間が2時間を切るのがうれしいです。2本立てをご覧になるには最適かと思われます。

(10)予測もしていなかったこと

 この上映会のポスターを貼りに回ってたときのこと。女子大生っぽい人が、せっせと貼ってる最中のポスターを見るなり、「あ、裕次郎や」とつぶやきました。往年の裕次郎ファンならまだしも、若造が「裕次郎」と呼び捨てです。でも往年の裕次郎ファンのみなさま、怒らないでください。これは良いことだと思うのです。若い世代に受け継がれている証拠だと思うからです。予測していなかったのですが、『嵐を呼ぶ男』が昨年末から缶コーヒーのCMに使われていますね。

以上、Jプログラムを選んだ理由として、とりあえずの10項目を挙げてみました。
上映当日にはいつもアンケートをお配りしていますが、今回は、ちょっといつもと違います。用紙の裏面にはフィルムセンターが提供する全20プログラムを掲載しています。ご来場いただいたみなさまに、次見られるならこれが見たいベスト3を選んでいただき、選んだ映画に対する思い入れも、ちょっと添えていただこうという趣向です。

インターネットによる関連データ
優秀映画鑑賞会碧水ホール上映編の詳細はこちらからご覧いただけます
http://www.town.minakuchi.shiga.jp/hekisuihall/event02/bunkatyo.htm
フィルムセンターのアドレス http://www.momat.go.jp/fc.html
全プログラムリストと開催地情報 http://www.momat.go.jp/FC/yusyueiga.html
(文/上村秀裕・碧水ホール学芸員)


以上、Jプログラムを
選んだ理由
とりあえずの10項目



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