
『キートンの猛妻一族』
My Wife's Relations (1922)
出演:バスター・キートン、ケイト・プライス、ジョー・ロバーツ、モンティ・コリンズ
監督・脚本:バスター・キートン、エディ・クライン
製作:ジョセフ・M.スケンク、コミックフィルム作品 、ファーストナショナル配給
上映時間22分 公開1922.5.
【あらすじ】
大都会のなかの外国人街。様々な言語が飛び交い、住民同士の誤解も絶えない。ポーランド人のカップルが電話で確認する「そこでは婚姻届の手続きがポーランド語でできますか」判事は答える「ええ私はポーランド語以外は話せません」。その判事の職場の向いにバスターが職人をしているパン屋があった。バスターがパン生地をこねているときに入ってきた郵便屋は、バスターのせいで郵便物をぶちまけてしまう。靴の裏に付着した一枚の手紙を、バスターは返そうかとも思うが、怒った相手が物を投げてくるので、手紙をポケットにしまい逃げ出す。通りの角でアイリッシュ系のデカい女性(ケイト)とぶつかる。向かいの窓が割れたのはバスターのせいだと勘違いしたケイトは彼を判事のもとに引っ張っていく。ところが判事も勘違い、この二人は先程の電話のカップルに違いない、と婚姻の手続きをしてしまう。意外な展開にもケイトは喜び、配偶者を力づくで家まで連れていった。
妻の家の同居人は父親と四兄弟。その貧しくともアグレッシブな一族は、新しい家族の一員をぞんざいに扱ったが、彼のポケットに「あなたは近々大金を相続できます」という弁護士からの手紙が入っているのを見つけると、態度を一変。さっそくバスターに舞込むはずの遺産をあてにして多額の借金をし、広々とした高級マンションを購入、豪勢な暮らしを始めたが…。
【かいせつ】
初公開当時のわが国は日常的にパンを食べる人が少ないため、冒頭の「パン作り」を「飴作り」と解釈して、『キートンの飴ん棒』なるワケのわからないタイトルがつけられていた。これはキートン研究のオーソリティ児玉数夫氏の調査によるが、考えるに命名したのは弁士ではなかろうか。「今日も朝から飴職人のキートン氏はキンタロアメをチギッてはノバして〜」ってな弁士がルーツとしたならば、ラストのイースト菌は何と喋っていたものか!?別タイトルは『キートン半殺し』。製作当時のキートンの私生活に潜む妻君一族へのあてつけをカリカチュアした内容という説では、「半殺し」のタイトルは的を得ている。
(後日談)本かいせつ作成の後、本作品から“キャンディ・ショップ”という看板文字が発見された。つまり長年言われ続けてきた“パン屋”ではなく、確かに“飴屋”だったのである。当時の邦題は決して間違いではなかったのだ。(1995年6月11日発見)
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