『キートンの鍛冶屋』


The Blacksmith (1922)

出演:バスター・キートン、ジョー・ロバーツ、ヴァージニア・フォックス 
監督・脚本:バスター・キートン、マル・セント・クレア
製作・ジョセフ・M.スケンク、コミックフィルム作品、ファーストナショナル配給   上映時間20分 公開日1922.7.21

【あらすじ】
 「大きな栗の木の下で、村の鍛冶屋をやっている、彼のたくましい腕の筋肉は、鉄筋のように強かった。……」
 H.W.ロングフェロウの有名な詩『村の鍛冶屋』より
 バスターは、鍛冶屋の下働き。主人のジョーは、怒ると前後の見境がなくなる乱暴者。ハンマーや車輪が看板にしている磁石に吸い寄せられてしまったのにも気づかず、無くなったのはバスターのせいだと勘違いして突き飛ばす。その様子を通りから見ていた村のシェリフが、二人の間に入って「暴力はいかんよ」とジョーを諭す。その間に署長のバッジやピストルが、磁石のせいで紛失。ジョーが奪ったと勘違いした署長は「そこまでするなら逮捕だな」と仲間を助っ人にして連行しようとするが、村一番の怪力男は五人がかりでも手に余る。ところが、意外にもバスターのおかげで何とか逮捕にこぎ着つけた。
 自由に仕事が出来るようになったバスター。しかし、失敗の連続。蹄鉄の好みがうるさい白馬には、車のオイルで黒い跡を付けてしまうし、柔らかな鞍をお望みの女性には、サスペンション効きすぎの鞍を売ってしまう。終いには新品同然の高級車に損害を与えてしまう。ここまでやってしまったからには逃げるしかない。
 一方、例の白馬の持ち主の女性(ヴァージニア)は家に帰り着き、家族の出迎えを受けるが、母親が愛馬に付いている黒い跡を見て悲鳴を上げる。驚いた白馬は、ヴァージニアを乗せたまま暴走した…。

【かいせつ】
典型的ドタバタ喜劇ながらも、遠方より顔のアップまでワンカットで迫る奇異なショットから、ラストのオチにつながるキートンの空間的ギャグの完結法など、短編作品らしからぬ奥行きがウリ!!実験映画よりもアヴァンギャルドな価値観、ラディカル・ポップな展開と眩惑しそうな佳品。


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