『ハイ・サイン』


The High Sign (1920)

出演:バスター・キートン、バーテイン・バーケット・ゼイン、アル・セント・ジョン
監督・脚本:バスター・キートン、エディ・クライン
製作:ジョセフ・M.スケンク、コミックフィルム作品、メトロピクチャーズ配給
上映時間18分 公開日1921.4.12 日本劇場未公開

【あらすじ】
 無賃乗車のバスターが列車から放り出された所は遊園地の近く。メリーゴーランドを楽しんでいる人のポケットから新聞をかすめ取り、求人広告欄を探す。銃の射的場で客集めのために射的のエキスパートを募集しているのを見つけ、広告の住所を頼りにその射的場=タイニイ(ちっちゃな)・ティムの店を訪ねてみることにした。その途中、無警戒な警官から拳銃をせしめて射的の練習をするが、腕のせいか拳銃のせいか狙った的に命中させられないバスターであった。
 射的場では、タイニイ・ティムがバスターを迎え、命中のしるしの鐘を鳴らせるようになったら雇う旨を言い残して席を外し、地下の別室に向かった。実力では鐘を鳴らせないことが判ったバスターは、的に命中しなくても鐘だけは鳴る仕掛けを考えつき、ティムの居ない間にその備えつけを完了した。
 店の地下室は、ティムが率いるギャング団"ブリンキング・バザーズ"のアジトだった。一味は裕福な実業家から1万ドルを脅し取ろうとしていたが、期限を過ぎても金を渡そうとしないので「ええい面倒だ、殺っちまおう」と相談していた。標的にされた実業家の方でも身の危険を感じ、自宅を改造するなどギャング団の襲撃に備えていた。
 ティムが一旦店に戻りバスターの様子を見に行くと、百発百中で鐘を鳴らしている。これは殺し屋として使えると閃いたティムは一味にその案を教えるために再び地下室に降りた。その間にその店に立ち寄った実業家父娘もまたバスターの銃の腕前に惚れ込み、ボディガードを依頼した。娘に切願されたバスターは断らなかった。
 ギャング団の計画がまとまるとバスターは地下室に連れて行かれた。そこで入団を強要され、実業家の殺しを命令されたバスターは、実業家の自宅へ向かった…。

【かいせつ】
1989年のカリフォルニアの古典映画発掘作業にて蘇生した幻の作品のひとつ。映画史家でプロデューサーのジェイ・ワードが復刻したヴァージョンと、カリフォルニアのエム・ジー・ライブラリーという個人経営の映画博物館が所有するプリントの2種類があり、それぞれ字幕の内容とタイミングが違っている。今回上映のフィルムは、ジェイ・ワード版のスクリプトを基に喜劇映画研究会が再構成したオリジナル・ヴァージョン。この日本版を編集する際、現行のどのヴァージョンにも存在しないキートン・プロダクションズのオリジナル字幕(スポークン・タイトル)が新たに数コマだけ確認された。その昔、完成後1年を経て公開された作品のため、再編集のモレがあったものか?あるいは現行ヴァージョンより元々が長い作品なのか?

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