『キートンの強盗騒動』


The Goat (1921)

出演:バスター・キートン、ヴァージニア・フォックス、ジョー・ロバーツ、マル・セント・クレア
監督・脚本:バスター・キートン、マル・セント・クレア
製作:ジョセフ・M.スケンク、コミックフィルム作品、メトロピクチャーズ配給
上映時間17分 公開日1921.7.14

【あらすじ】
 一文無しのバスター。パンの配給を受けるため失業者の列に並んだが、自分の番の目前で、本日のパンは品切れに。人間、食うに困れば何をするかわからないもの。いっそのこと泥棒でもしようかという気持ちを抱えて歩いていると、たまたま刑務所の前を通る。鉄格子の窓から中を覗くと、捕まったばかりの犯罪者が人相写真を撮られている。自分がこんなことになるのはやっぱり嫌だな、と思いながらその様子をしばし見る。写真を撮られていた犯罪者は、デッド・ショット・ダンと呼ばれる知能犯。悪知恵を働かせ、自分の代わりに窓の外のバスターが写るよう細工した。撮影が済み、別室に移った知能犯は、脱走にも難なく成功した。
 犯罪に踏み切れないバスターは、今度は迷信に頼ろうとする。「蹄鉄に唾をかけてから後ろに投げれば、落ちたところに福がある」と信じて投げた蹄鉄は、こともあろうか警官に当たってしまう。頭に来た警官は、バスターを追いかける。
 その長時間にわたる執拗な追跡を、列車を利用してなんとか振り切ったバスターは、とある小さな町の駅に降り立った。その時既に、凶悪犯デッド・ショット・ダン脱走のニュースは、町中に知れ渡るところとなっていた。掲示板に自分の写真がお尋ね者としてデカデカと出ている。容疑は殺人。身に覚えが全くない訳ではない、弾みで人を倒したまま逃げてしまったことがあった、と記憶を辿っているちょうどその時、モルタルを頭から被って真っ白けの左官工が掲示板の裏から登場。化けて出た!と驚いて走り出すバスター、通りの角で町の警察署長ジョーと出くわす。指名手配の犯人がこんな所にいた!とばかりにジョーが追う。バスターは、なんとか逃げのび、ヴァージニアの家に隠まってもらうことを思いつく。あの娘は、人を倒して逃げたあのときに現場にいたので事情を解ってくれてるはずだから。そして、彼女の家でご馳走になっているところに、彼女の父親が帰ってきた…。

【かいせつ】
脱獄囚デッド・ショット・ダンと思われたキートンは、街で助けた娘に恋をするが、実はその娘の父親とは…。短編ながらも複雑なプロットの“スレ違い”で、ドタバタに終始せず、ギャグを巧みに連鎖反応させる佳作。ヴォードヴィル風のギャグを映画的連続性に変換している点が出色。

<次のページ> <上映作品リスト> <全作品リスト> <表紙>