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HVS通信 vol.63 平成15年(2003年)8月 Hekisui Hall volunteer staff original since 1995


HVS通信 vol.63
2003年(平成15年)8月
野村誠(三輪真弘)...1
●9月10月の碧水ホール....2
 ガムランコンサート『桃太郎』(中村道男)....2
●坂本善三美術館(いわいがく)...3
●シリーズ文化経済基礎論(小西広恵)....3
悪くないぜ、30代(井上陽平)....4

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熊本の芸術空間(1)
坂本善三美術館


 熊本に来てはや4ヵ月、出無精でいまだに近場の温泉ひとつ行っていないワタシだが、教職員旅行なるものにせっつかれ、今や超有名になった黒川温泉と阿蘇の旅に出かけた。
 その道中、熊本市内から車で東に1時間半ほど行った小国町(おぐにまち)という片田舎に、坂本善三美術館はある。坂本善三 (1911〜1987) はこの小国町に生まれ、現在の武蔵野美術大学、パリ留学などを経て熊本で活躍した画家で、「グレーの画家」「東洋の寡黙」などと称されている。
 この美術館では、年6回ほどテーマ別に作品が集められ、うち4回は坂本善三、2回は棟方志功などの他の画家の作品が展示されるとのこと。今回訪ねた時には、「坂本善三と建築」ということで、坂本善三の具象から抽象への過渡期の作品を中心に展示されていた。パリ留学中の50年代に描かれたノートルダムを題材にした4点の作品から、60年代の抽象絵画までが並ぶ。しかし抽象といっても 、描かれている図形が升や日本の家屋の格子や屋根から取られていたり、また木の朽ちる感じを出していたり、といったように、日本の土着のものからインスピレーションを得ている。西洋の技法で日本のモチーフを表現する、というあたりがこの画家のひとつの面白みでもある。
 美術館は、約140年前に建てられた庄屋の家屋を移築したものと、近年建てられた本館からなる。一番の特徴は、日本で唯一(ということは、恐らく世界でも唯一)の畳敷きの展示室。畳にあぐらを書いたり、ごろんと寝転がって作品を鑑賞することができるように、普通の美術館より作品が20〜30センチ低く配置されている(あまりの気持ちよさに、学芸員の方の説明中に寝息も・・・失礼ながら)。
 美術館の隣には樹齢700年の杉の巨木が立つ神社があり、趣をそえている。静寂のなかに蝉のなき声だけが響きわたる荘厳な空間。この辺りに別荘でもあったら、研究もさぞはかどるだろうになァ・・・とため息をつきつつ、坂本善三美術館をあとにした。
いわいがく(2003年3月までHVS)
シリーズ 文化経済基礎論
 今年度から碧水ホール・ボランティアスタッフに参加した小西広恵さんは、京都橘女子大学の1回生です。この大学は2001年度から文化政策学部が新たに開設され、彼女はその3期生となりました。大学にこのような学部が誕生することは、10年前には考えられませんでしたが、ふり返ってみると、必要だというムードは徐々に高まっていたと思います。
 小西さんが受講している授業のひとつに、
文化経済基礎論があります。この授業では、受講後にリポートを書くことになっているそうです。そこで、HVS通信誌上でも、彼女のリポートを順次掲載していくことにしました。彼女が、文化政策学部でどのような勉強をしているのか、ホールスタッフはもちろん、アーティスト、そして観客のみなさんなど、ホールに関わる人にとって興味深い内容となっています。
(上村秀裕/碧水ホール・学芸員)

文化経済基礎論・第1回
講義に対する講義内容の要約と論評
文化と経済の関係がなぜ密接化してきたのか。

 今は昔と違い、安いだけでなく品質の高さを要求されるようになってきた。生活の中に文化が入り、あらゆる商品やサービスを提供する人達が文化というものを尊重しないと「物」が売れない時代になってきたのである。
 社会の人々が文化を尊重するとは、個性、創造活動、そして文化的環境を尊重する、ということだ。近年、文化に関する産業が発達しているのは明らかである。このような背景のもとで、現代の人々は生活の質を高め自己満足できる、創造的な物を得ないと満足できなくなっている。かけがえのない瞬間を求め、商品を買うのである。この結果、経済関係は商品の単なる取り引きではなく自己実現の機会、なのだ。しかし、そのうちに私達は知らず知らずのうちに自己実現だと思っていても、流行を追っていた時代を再現する企業に躍らされていくのではないか、そうに違いない。

文化経済基礎論・第2回
講義に対する講義内容の要約と論評
  消費者の文化的欲求と経済の発展について。

 A・トフラーは現在第三の波が来ていると述べている。第一の波は人類が生まれた頃、狩りや農業をして生活していた時に来、第二の波は19世紀から行った産業革命の時に来た。今まで農業中心だったのが工業中心になり、大量生産・大量消費の時代になったのだ。自動車王のフォードはベルトコンベア−を開発し、コストを減らしていった。第二の波が来たこの時代、
人間にとって個性というものは必要とされなかったのである。そして第三の波が来ている現代では、情報技術が発達しそれを上手に使うことで、個性を重視した新しいやり方へと変っていった。コンピュータと情報通信ネットワークを使い、注文生産ができるようになった。
 個性ある消費者が個性ある企業に伝達すると、消費者は自分に合った商品を得ることができるのではないか。それを取り入れたのがファッション業界だ。消費者一人一人が質の高いものを求め、文化を求めるようになってきた。消費者の文化性が商品を変えていくことになったのである。個性的な商品を求める消費者に応えることのできる生産者ができ、大量生産から各品種少量生産へと変化した。
 第三の波は1980年代のアメリカで起こった。消費者は文化の多様性を求め、生産者がそれに応えようとしていった。個性を生かすビジネスが動き始めたのだ。今私たちが生きている時代はとても生活しやすい、消費者のための産業形態となった。
(小西広恵・HVS)
−−−次号につづく−−−

http://www.jungle.or.jp/sazanami/
 サザナミ記念アンサンブル練習会
 毎週木曜日 午後7時から
 ヴァイオリンなどの弦楽アンサンブルを楽しむグループです。大人も子どももはじめての人も参加できます。子どもは小学校1年生くらいから。指導鈴木博詞(京都チェンバーオーケストラ音楽監督・指揮者・ヴァイオリニスト)他
 9月28日日曜日午後2時から
『サザナミ記念アンサンブル定期演奏会』を開催、併せてヴァイオリンワークショップも計画されています。

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