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H.V.S通信 vol.63 2003年(平成15年)8月 home




HVS通信 vol.63
2003年(平成15年)8月

編集・発行
碧水ホールボランティアスタッフ
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碧水ホールの公式ホームページ
http://www.town.minakuchi.siga.jp/hekisuihall/

●野村誠(三輪真弘)...1
9月10月の碧水ホール....2
ガムランコンサート『桃太郎』(中村道男)....2
坂本善三美術館(いわいがく)...3
シリーズ文化経済基礎論(小西広恵)....3
悪くないぜ、30代(井上陽平)....4

「野村誠」
  三輪真弘 (作曲家)

 最近、作曲家の野村誠さんの音楽をまとめて聞く機会があった。既に向井山朋子さんのCDに収録されているピアノ作品で、彼はぼくを音楽だけで本当に泣かせた唯一の日本人作曲家である。だから期待はいやでも高まる。一見、明るく無邪気。しかし、ユーモアやしばしば曲名に示唆される物語的な演出にノセられるほど、ぼくは素直な聴き手ではないつもりだ。それでも彼の音楽はどれも、他人事のような音楽ばかりが溢れる日本に咲くたった一輪の花のように力強く存在していた。小学校や老人ホームでの活動、アマチュア・プレーヤーによるおもちゃ楽器の演奏などの特徴ばかりが目立ってしまい「にぎやか楽団」などと紹介されて、彼も複雑な気持ちなのだろうが、作曲家である野村誠はどうして未だにあまり話題にならないのだろうか?
「しょうぎ作曲」と呼ばれる集団作曲の試み、最新の「お手紙楽譜」と呼ばれる(ぼくが勝手にそう呼ぶのだが)記譜法などその活動自体がユニークであるのはもちろんだが、音楽の可能性を模索する現代の作曲家がまぎれもなく作曲家であり続けながら、かつ音楽のもつ本来の喜びを逃すことなく作品を生み出すという離れ業を一体、彼以外のどの作曲家がやってみせてくれたというのだろう?

 例えば「お手紙楽譜」ではアンサンブル全体のスコアというものが存在しない。楽譜は作曲家が演奏家に宛てた手紙のように「……しばらくすると隣のクラリネットがこのフレーズの演奏を始めるから、そうしたらこちらのフレーズに進んでください」と楽譜を交えた言葉で書かれている。それはまるで複数の人々が様々な場所に行くために「地図」を渡されるかわりに
口述で指示を受けるようなものである。演奏家には自分と他のプレーヤーの相対的な位置や関係しか知らされず、通常とはまったく異なった時間感覚、つまり思考の方法と自由を与えられ、同時に文章によってその時々の繊細なニュアンスが伝えられるのだ。その際、今述べた、「地図」という全体の鳥瞰図こそヨーロッパ式のスコアのことであることは言うまでもないが、スコアと同様に正確に書かれ、再現性があるのに、「お手紙楽譜」はまったくスコアとは別の概念のものである。そしてそれは「どうして誰もそんなことしなかったのだろう」と思ってしまうほどに簡単なことだったのである。記譜法もさることながら彼のこの、シンプルであたりまえのことをそのままやってのける姿勢はそのまま、彼が自分の音楽の必然にだけ目を向け、それに忠実に従う驚くべき強さから来るものなのだろう。それによって彼の音楽は、リズム法や調性がどのようになっているかとか、現代的な技法はどのように使われているのかとかの分析的な攻撃を無化し、その実体を開示するのである。それはしばしば、即興演奏家の音楽のようでいながら、演奏の勢いを見事に統合した極めて知的な方法論によるコンポジションとして現れてくる……そんなことより、彼の多くの作品の特徴である、美しくも見事なボリュームとプロポーション、夢見るような音楽の持続を体験すれば、こんな感想文など無意味なのかもしれないとも思う。
(webマガジン『水牛のように』2002年7月より転載)
http://www.ne.jp/asahi/suigyu/suigyu21/index.html

8/24コンサート『音楽ノ未来・野村誠の世界』●当日のプログラから


 碧水ホールの保有するジャワガムランセットをワークショップ「親子で楽しむ野村誠の世界」の期間中随時公開しています。
 また、ワークショップ、リハーサル(一部非公開あり)も見学できます。
■8.20(水)、21(木) 18:00-21:00
 22(金)18:00-20:00
ワークショップ「親子で楽しむ野村誠の世界」
■8.23(土)公開リハーサル
  14:00-  ワークショップ参加者
  15:00- マルガサリ+ティルトクンチョノ
     『踊れベートーヴェン』
  (16:00-19:00非公開)
  20:00- マルガサリ『桃太郎』

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2003年9月9日から