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H.V.S通信 vol.52 2002年(平成14年)5月



vol.52-21
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『出張講談』旭堂南湖 (パン)
 
  『出張講談』旭堂南湖 (パン)

 先日、水口町で出張講談を行いました。
 皆様は講談というものをご存じ でしょうか。コウダンと聞くと大抵の方は、 「ああ、道路公団ね」 と言います。あるいは、 「住宅公団のことか」 と言います。私が、 「いやいや、そうじゃないんです。話芸の講談です。着物を着て座布団の上に座っ て一人で喋る芸能です」 と言うとポンと手を打って、 「ああ、わかった。わかった。落語やな」 ・・全然わかってないんですけどね。(パン)
 講談と落語。スタイルは良く似て います。どちらも和服で座布団の上に正座をして一人で喋ります。違う点は、喋る 内容です。落語は笑い話ですが、講談は物語です。つまり、落語が笑いを目的とし ているのに対して、講談は筋の面白さを伝えることを第一の目的としております。 講談を読む人を講談師と言います。講談の場合、読むと言います。因みに落語は話 す、浪曲は語ると言います。(パン)

 私は旭堂南湖と申しまして講談師です。
 まあ、私の場合は好男子の講談師と評判なんですけどね。江戸時代には講談と言わずに 、講釈とも言っておりました。川柳にございます。
「講釈師 見てきたような 嘘を付き」
 実はこの川柳、講釈師が作ったんですけどね。それは余談としまして、まあ、お 客様の前で物語を読むわけですが、この内容にチョイチョイと嘘が混じっているの ですね。
「講釈師 扇で嘘を 叩きだし」
 という川柳もございます。これも講釈師が作ったんですけどね。(パン)  先程か らパンパンと音を立てておりますが、我々講談師は座布団の前に釈台というものを 置きます。講釈する台ですから、釈台と言います。高さ三十センチぐらいのみかん 箱を想像して頂ければ結構です。木で出来ております。これが釈台です。昔はこの 釈台の上に本を置いて喋っておりました。ですから、今でも講談は読むと言うので す。勿論、今は本なんて置きませんけどね。内容を全て頭の中に入れて読むのです 。

 この台を先程からパンパンと叩いております。この叩いているものがハエ叩き。 ・・では、ございませんよ。(パンパン)張扇です。ハリオウギと読みます。扇子 の中骨の竹に和紙を巻いて作ったものです。これでパンパンと叩きながら、調子良 くお喋り致します。(パン)一つ叩いたり、(パンパン)二つ叩いたり。先日、私 が考えだした叩き方というのは(パンパンパンパンパンパン)名付けまして、寝て いるお客さんを起こす。・・まあ、色々と役に立つんですが。(パン)

 さて、そろ そろ本題に入りますが、我々、上方講談師は大抵大阪に住んでおります。人が多い 所の方が仕事がしやすいからです。ですから、講談を聞こうと思えば大阪まで出て こないと聞けません。ただ私は甲南町で育ちましたし、水口東高校を卒業しました ので、常々から地元で講談をやりたいと思っておりました。その念願が叶って、こ の度水口町の西蓮寺で講談を読むことが出来ました。これは水口在住の西川君が出 張講談として呼んでくれたからです。出張の条件は「交通費と家庭料理」です。 プロの仕事ですから赤字には出来ません。交通費は頂きます。講談を喋りまして「 はい、サヨナラ」というのはつまらないです。地元の家庭の味をご馳走になりなが らお喋りが出来たらなあ、ということで家庭料理をお願いしております。
 西蓮寺の 花祭りの後で講談を読ませて頂きました。演目は「難波戦記より荒大名の茶の湯」 と「赤穂義士銘々伝より矢頭右衛門七」。そして昔懐かしの大道芸の南京玉すだれ 。これでザッと一時間。三十人程のお客さんに楽しんで頂きました。
 「南湖さん面白かったで」 「有難うございます。どれが面白かったですか」 「やっぱり玉すだれやなあ。一番面白かったで。また玉すだれやってな」
 少し落ち込みました。私は大道芸人ではなく、講談師なんですけどね。その後は 西川君宅で食事会。この時に西川君のお母さんを見てアッと驚きましたね。(パン )
 今を去ること十六年前。南湖が小学六年生の時の担任の西川先生だったのであり ます。
「せ、先生? に、西川先生じゃありませんか」 「あら、そういうあなたは辻君(南湖の本名)じゃない。まあ、大きくなって。全 然変わってないね」
「そういう先生も十六年前と少しもお変わりありませんね」
「えっ。今は講談師になったの?当時から頭が良かったから末は博士か大臣かと思 ってたら、こんなに落ちぶれてしまって・・・」
 まあ、そんなことは言いませんが・・・。こういう偶然の再会があるから出張講 談は面白いのです。(パン)そもそも、この西川君と私の出会いはと申しますと、 まず碧水ホールのことから話し始めなければいけません。(パン)
 波乱万丈の非常 に面白い話なのですが、(パンパン)丁度時間となりましたので、この続きはまた いずれの機会にでもお喋りしたいと思います。どうも有難うございました。

(投稿・旭堂南湖 講談師)


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『第6回 名探偵ナンコ』
ーよみがえれ!探偵講談ー
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日時/7月28日(日)
開場/6:00pm 開演/6:30pm 料金/1500円
出演/旭堂南湖
「講談・猟奇王」(原作・川崎ゆきお)
「江戸川乱歩一代記・乱 歩と神田伯龍」(作・芦辺拓)
ゲスト・芦辺拓(作家)「対談・探偵講談と探偵小説あれこれ」
 問い合わせ/南湖事務所・0729-88-4550

旭堂南湖プロフィール
  きょくどうなんこ。
上方講談師。1973年生まれ。甲南町で育ち、水口東高に進学。 大阪芸術大学大学院修士課程卒。1999年三代目旭堂南陵に入門。上方講談界、期待 の若手。「旭堂南湖てぬぐい」(イラスト・森元暢之)を千円で絶賛発売中。残り わずかです!!

旭堂南湖HP http://www16.u-page.so-net.ne.jp/bc5/nanko/
旭堂南湖メールアドレス nanko@bc5.so-net.ne.jp




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